回答その後

超短文。
まだ自分の心にまで気が向かない。





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その日俺は逃げるように家へ帰った。
残業も寄り道もせずに暗い道を真っ直ぐに。

朝倉を押し返した手が熱い。
心臓も、ともすれば激しく脈打ちそうなほど緊張しているのに、
頭だけが動きを鈍らせて現実から目を逸らしていた。





唇が重なった。
ゆっくりと舐める熱い舌を上唇が覚えている。
何故嫌いだと言ってくれないのだと呻いた、朝倉の言葉が胸に刺さっている。
はっきり言われた方がどんなに楽かと。
その通りだ。
俺はずるい。
傷つけたくないなどと言い訳をして、自分が傷付きたくなかっただけだ。
明確に拒絶して、あの心地の良い時間を手放したくなかっただけ。




コートを放り出してソファに埋もれる。


明日、バーへ顔を出せるだけの勇気が出るだろうか。

何もなかったかの様に振る舞って、
そんな事を若い彼は許してくれるのだろうか…。



触れた唇が熱い。