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手ブロ創作企画関連
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手ブロ記事見てどうしても打ちたくなった西方一人称です。

友人でも同僚でも恋人でもない人達。




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黒や暗褐色をベースに整えられたシックな店内で、
鮮やかな色彩を放つ小さなそれらが、
煙草の代わりに口寂しさを紛らわせる飴だと聞き、
朝倉も仕事中には一応吸わない様に考えているのかと今更ながら少し見直した。

良く考えれば、確かに彼が此処で煙草を吸っている姿は見た事がない。

カクテルグラスに入れられた飴は小さなのどんぐりあめか、
無駄な包装も無く色だけが重なり合っている様は洒落ている。
薄暗い店内で、小さく存在の主張もしないが、
北極星のように確かに其処に在り静かに輝いている。
これならば店内装飾の一つとしても違和感がない。
上手く考える物だと感心していると、
店内に溶け込む様な落ちついた声で、一つ取ってくれと声を掛けられた。

一番上に乗っていた淡いピンク色を一つ取り上げる。
グラスの中の飴が、からんと穏やかな音を立てた。


「これでいいか?」
「えぇ…」

摘み上げられた飴を灰色の目が捉える。

其処で朝倉が何を考えたのかは分からない。
ただ美しいカクテルを作りだす手が、飴を摘む俺の手を掴み
そのまま口元まで導いた。
店内のBGMが遠くなり、俺の目が、開いた唇の形を詳細に映し出す。

皺の数まで見えていたはずなのに、
ほんの少し触れた
温く湿った感触が舌に寄るものなのか唇に寄るものなのか判別できなかった。
否、そもそも引いた指は濡れていなかったのだからただの錯覚か…。



突然の出来事にかたまっている俺を余所に、
原因を作った当の本人は飴を転がし「あ、ストロベリー」などと呟いている。

元妻と別れて以来10年近く
人との触れあいが無い俺には、信じられないくらい鮮やかな感触だったが、
若い彼にとってこの程度は何でもない事なのだろう。
改めて時代の隔たりを感じる。
かと言って居心地が悪くなる訳でも、朝倉への認識が変わる訳でもないのは、
きっと自分にとって幸いな事だ。



小さくため息を吐くと白く曇ったグラスを、空にして差し出す。


「もう一杯、同じ物を頼む」


「はい」と微笑んだ顔が少し安心したような穏やかさを湛えている気がした。





俺の耳にも戻ってきたクラシックジャズを聞きながら、
色とりどりの飴が入ったカクテルグラスをながめる。
おそらくこのグラスもカウンター上が定位置なのだろう。
偶々この席に座り、目に止まらなければ気付かなかったそれは、
やはり北極星に似ている。

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